■ |
予防法
予防薬の投与には3つの方式があります。錠剤・散剤(粉)・チュアブル等のおやつ型など毎月1回口から入れるタイプ。及び注射もあります。投薬量は体重によって変化するため、とくに成長段階の幼犬は毎月、きちんと体重を計っておくことが必要です。同時に回虫を駆除するものも開発されています。
予防薬の副作用については、長い年月にわたって薬の実効性と副作用の軽減が研究されています。ただし、コリーやシェットランド・シープドッグなど一部の犬種では、脳脊髄液のなかに薬が入りやすいため、規定量以上に投与すべきではないという観点から注意が必要です。
※犬は無理に薬を飲ませると、飼い主が気づかない間に吐き出したりするケースもあるので、投薬後、ほんとうに飲み込んだかどうかを確認しておきましょう。
※これらは、蚊の吸血によって犬の体内に侵入した感染幼虫が血管内から心臓内に到達する前に、つまり感染後約2ヶ月までに幼虫を殺滅することでフィラリア症を予防しています。このタイプの予防剤は「投与後1ヶ月間効果が持続してフィラリアの感染を防いでいる」のではありません。血管または心臓内に入ってしまった幼虫に対して予防薬の効果は得られません。
|
★ |
予防薬と併用して防蚊対策を行なって下さい。
犬用蚊取り線香や電気蚊取り、または蚊の嫌がる電球を置いているから蚊に刺されない、と油断はできません。人間は刺されないので蚊はいないと思っている人も多いのですが、床や地面近くで寝る犬の呼気に蚊は寄っていきやすいのです。蚊取り線香は蚊を減らす効果はありますが、蚊に刺されることを完全に防げません。
蚊は空き缶にたまったほんの少しの雨水の中にも産卵して次から次へと繁殖します。蚊の発生シーズンは隠れ家となる茂みを片付けたり、雨水がたまる環境を放置しないなど、蚊を増やさない工夫も必要です。
|
■ |
治療法 血管内の虫を殺しても排出する物理的出口はありません。 フィラリアの治療には3つの選択肢があります。 ・手術で成虫を取り出す方法
・注射で成虫を殺す方法
・虫には何もせず 咳を抑えたり貧血を改善する対症療法。
※他にも方法はありますが当院では行なっておりません。
急性症…
大静脈症候群とよばれ、何もしないと数日の内に死にいたることがほとんどです。寄生する親虫の数が多かったり、心臓の小さい小型犬などの場合、右心房(大静脈からの血液を受けとる部屋)と右心室(肺動脈に血液を送り出す部屋)とのあいだの三尖弁に長い親虫がからみ、弁が閉じない急性症状(三尖弁閉鎖不全症)を引き起こし、逆流した血液同士が心臓の右心系内でぶつかり、血液がこわれ(溶血=貧血)、血尿が出るといった症状が表れます。こうなると速やかにフィラリア成虫の摘出手術を受ける必要がありますが、フィラリアによって傷つけられもろくなっている血管の中に管を入れるため、血管が破損する危険があります。
慢性症…
いろいろ治療法は考えられますが、とりあえず成虫を殺す方法を当院では選択しております。しかし薬剤による犬への負担と、駆虫によって死んだ虫が血管に詰まる恐れがあります。今現在まだ比較的に体力のある犬にこの治療法を選択しています。
駆虫後は安静にし、急性の血流不全を起こさせないように気をつけます。運動は犬の様子をよく見ながら少しずつ慎重に再開します。体調回復後は通常のフィラリア予防薬を投与します。場合によっては、外科手術による摘出を選択する場合があります。
犬の年齢や体力が手術や駆虫治療に耐えられないと判断された場合は、対症療法をすることになります。気管支拡張剤によって呼吸を楽にする、腹水がたまり始めているときは利尿剤によって排尿を促進させる等、いかに毎日を楽にさせてあげられるかが対症療法のポイントになります。
手術や駆虫が成功しても一度傷ついた血管や影響を受けた臓器は、完全に元通りになることはありません。フィラリアが寄生していること、分泌物や排泄物、自然死した成虫の死体により起こる肺高血圧症、多様な症状を示す心臓病となります。また 心臓の機能が充分でなくなることで全身の臓器がうっ血状態になり、肝臓・腎臓・肺などの重要臓器が機能不全を引き起こすようになります。
|
★ |
豆知識
ミクロフィラリアは、日中は体内の奥にいることが多く、夜になると、体表近くの血管への出現率が高まります。蚊の唾液を注射すると、さらに出現率が高まります。検査の場合は、夕方や夜間に採血したほうが精度が高いと言われていますが、1cc採血できれば昼間でも陽性・陰性の判定に問題はありません。
|